[No.116] 2008/05/13 (Tue) 02:17
『パイロットフィッシュ』 大崎善生
![]() | パイロットフィッシュ (角川文庫) (2004/03/25) 大崎 善生 商品詳細を見る |
《あらすじ》
人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない―。午前二時、アダルト雑誌の編集部に勤める山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、十九年ぶりに聞く由希子の声だった…。記憶の湖の底から浮かび上がる彼女との日々、世話になったバーのマスターやかつての上司だった編集長の沢井、同僚らの印象的な姿、言葉。現在と過去を交錯させながら、出会いと別れのせつなさと、人間が生み出す感情の永遠を、透明感あふれる文体で繊細に綴った、至高のロングセラー青春小説。吉川英治文学新人賞受賞作。
《感想》
文章が本当に透けて見えそうなくらいに透明感が溢れています。
読んでいると心が洗われていくような感じがする。
大崎さんの小説はとても素敵なフレーズがたくさん出てきます。
過去・現在・未来を通して人との出会いと別れ。
恋の切なさ。人間の儚さ。
人は時に、大切な物を失ってしまうときがある。
だけど、みんなその痛みを背負って生きていく。
そうすれば、いつかその痛みが暖かい気持ちに変わる時が来る。
この小説を読んでそう強く思いました。
私がこの小説で一番好きな場面は主人公が話す『傘の自由化』
この取り留めのない話が実は大きな伏線になっていました。
それを知ったとき、「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない」って言葉を深く感じました。
人は出会うことはあるけど、別れることはないんだと気が付かせてくれた一冊です。
[No.69] 2007/08/10 (Fri) 08:47
『きみにしか聞こえない』 乙一
![]() | きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫) 乙一 (2001/05) 角川書店 この商品の詳細を見る |
《あらすじ》
私にはケイタイがない。友達が、いないから。でも本当は憧れてる。いつも友達とつながっている、幸福なクラスメイトたちに。「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日、とりとめなく空想をめぐらせていた、その時。美しい音が私の心に流れだした。それは世界のどこかで、私と同じさみしさを抱える少年からのSOSだった…。(「Calling You」)誰にもある一瞬の切実な想いを鮮やかに切りとる“切なさの達人”乙一。表題作のほか、2編を収録した珠玉の短編集。
《感想》
「Callinng You」「傷−KIZ/KIDS−」「華歌」の三作の収録されています。
三作とも切ない話でしたが、それぞれ希望を感じさせられるような話です。
「Callinng You」は最近映画化された話です。
頭の中にあるケータイにかかってきた電話。
孤独な二人にとってそれは奇蹟のような出来事。
距離を縮めていく二人。
しかし、そんな二人に訪れるのは…。
もう一人の頭の中にケータイを持っている人物の正体に最後まで気づきませんでした。
そういうことだったんだ…と読み終えてすぐまた読み返しました。
「傷−KIZ/KIDS−」は、人の傷を自分の身体に移す事が出来る少年の話。
自らを犠牲にして、人の傷を治すアサト。
人間の綺麗には生きられない。
信頼していた人に裏切られ、傷つくアサト。
これは泣きました。
アサトが優しすぎて…。
最後の「華歌」は、これは完全に騙されました。
読み終えた時、意味がわかりませんでしたもん。
「えっ? ええええっ? なんで?」
って感じで…私もしかして勘違いしてたの?って思ってました。
でも、読み返してみたら…「そういうからくりだったのか!!」と納得できました。
あの挿絵は引っかけだったのか。
ひどい…(笑)
こういうの叙述トリックって言うんですよね。
私は一番「傷−KIZ/KIDS−」が良かったです。
でも、もし私がこんな能力を持ってたら…きっと使いません。
あとがき読んで、乙一さんってこういう人なんだ〜、とちょっと意外でした。
★★★★☆
[No.43] 2007/07/04 (Wed) 01:29
『地下鉄に乗って』 浅田次郎
![]() | 地下鉄(メトロ)に乗って 浅田 次郎 (1997/06) 徳間書店 この商品の詳細を見る |
《あらすじ》
永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは三十年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。だが封印された“過去”に行ったため…。思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。吉川英治文学新人賞に輝く名作。
《感想》
憎んでいた父親の若い頃の姿を知った真次。
今まで知らなかった父と同じ時を過ごすことによって知っていく父の想い。
「親の心子知らず」
映画も見ましたが、とても感動しました。
原作に忠実に作られていて良かったです。
以下ネタバレ感想
[No.27] 2007/07/01 (Sun) 05:00
『いつも日和』 青山七恵
![]() | ひとり日和 青山 七恵 (2007/02/16) 河出書房新社 この商品の詳細を見る |
人っていやね......人は去っていくからね。
《あらすじ》
20歳の知寿が居候することになったのは、 母の知り合いである71歳・吟子さんの家。駅のホームが見える小さな平屋で暮らし始めた私は、キオスクで働き、恋をし、吟子さんとホースケさんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。選考委員が絶賛した第136回芥川賞受賞作。
《感想》
こういう感じの話好きです。
ゆったりと流れていく季節の中、主人公と吟子さんが暮らす日々。
その生活の中で主人公は成長し、外へ向かう。
選考委員の村上氏が言うように「嘘のない自立」を描いた作品です。
吟子さんとの暮らしによって主人公の中で何かが変わり、そして「生きる」ということを何となく感じたんじゃないかな。
青山さんの文章はとても綺麗で読みやすいです。
吟子さんは素敵なおばあちゃんですね。
あんなふうに年を取ることができるのだろうか。
青山さんは23歳で三番目に若い受賞者。
まだ2作しか出していないので、これからいろいろ書いてほしいな。
今度デビュー作の『窓の灯』を読んでみよう。
★★★★☆
[No.9] 2007/07/01 (Sun) 04:29
『ハッピーバースデー』 青木 和雄、吉富 多美
![]() | ハッピーバースデー 青木 和雄、吉富 多美 他 (2005/04/18) 金の星社 この商品の詳細を見る |
《あらすじ》
実の母親に愛してもらえず、誕生日さえ忘れられてしまった11歳の少女・あすかは、声を失ってしまう。しかし、優しい祖父母の元で自然の営みに触れ、「いのち」の意味を学ぶ。生まれかわったあすかがどんな行動を起こすのか。そして、母親の愛は戻って来るのか…リアルな展開に、5頁に一度は、涙が噴き出る物語。
《感想》
「ああ、あすかなんて、本当に生まなきゃよかったなあ。」
この言葉って本当に重いです。
私も母親からこの言葉を言われると…自分というものの存在を完全に否定されたようで、自分が生きていていいのか怖くなります。
最初から泣きっぱなしでした…。
お兄ちゃんも可哀想だな。冗談のつもりで言ったことが妹を苦しめていたなんて。
祖父との生活によってあすかは本当に強くなったと思いました。
あすかの存在が周りにとても大きな影響を与えてくれた。
「生まれてきてくれてよかった」
みんなからそう思われて。
現実はそう上手くはいかないけど、人を愛すること、人に愛されることが書かれた本だと思いました。
★★★★☆








